トーキョーバビロン 馳 星周
子供の看病をしながら、高校時代の友人のI君から借りた「トーキョー・バビロン」を読んだ。I君とは高校のころから、大体本の趣味が似通っているような気がする。江戸川乱歩とか大好きだし、一緒にそのころ池袋にあったパモス青芸とかに妖しい映画を見に行ったりした。「俺の名前は濱マイク。職業は私立探偵。」というフレーズで始まる永瀬正敏主演の「濱マイク」シリーズは全部一緒に見たような気がする(そのうち1本は爆睡してたのであまり覚えていない)。
簡単にいうと「妖しい感じのミステリー」が大好きなのである。
当然のように、馳星周も大好きだ。馳星周はそのI君から教えてもらって読み始めたんだと思う。こんな妖しいところがまだ日本にあったのかと「不夜城」を読んでわくわくというかぞくぞくしたのを覚えている。江戸川乱歩が描く古い日本の妖しさとはまた違う、混沌とした妖しさ、アジアとしての日本の妖しさというかそういう世界観に圧倒されたのだ。たしか映画の不夜城も一緒に新宿の歌舞伎町に見に行ったと思う。見終わった後、二人で焼肉を食べながら「金城武の日本語どうにかならんか」というような話をしたのを覚えている。
で、先日、そのI君の新居(結婚した)に遊びに行った際に、強奪してきたのがこの「トーキョー・バビロン」だ。
呪縛
新宿ジャパニーズマフィアストーリー
3人の騙しあい
狂気のアッパーカット求む
土日に娘が高熱をだして臥せっていたため、その看病をしながら一気に読み終えた。相変わらず物語は破滅へと進む超高速ロードムービーだ。まっとうな人生からドロップアウトしてしまった人物、水商売の女、チンピラ、やくざが破滅へ向かう頭脳戦を繰り返していく。それは爽快なまでな悪だくみのオンパレードで本当に一気に読んでしまった。
そして何より引き込まれたのは、実はブラックマネーの温床であるIT業界について描かれている点だ。この本には、やくざのフロント企業ベンチャーキャピタルにだまされ、ビジネスに失敗し落ちぶれる若きIT経営者がでてくる。一見まったく無縁にみえたやくざの世界が実はIT業界と非常に近いところにあるということにどきりとさせられてしまうのだ。
ちなみに江戸川乱歩で一番好きな作品は「パノラマ島綺譚」だ。このパノラマ島綺譚が実は漫画化されている。