すぐにできるプレゼンテーションを上手くする方法 その5

何を言っているのかわからないと言われてしまうひとへ

こんな人が多いのではないだろうか?非常に技術力が高く、専門分野の知識も豊富で、仕事の経験も豊富、だけどもプレゼンテーションや説明が下手。熱意はある、その分野への思いも強い、なのにその思いが空回りしてしまって、まったく相手に伝わらないという人だ。

こんな人の多くは、相手が持っている辞書が何かということを意識したほうがいい。

何が言いたいのかというと、話している相手にあわせて話をしなければならないということだ。つまりもっと簡単な言葉を使って説明をしたほうがいいということだ。

「ケチ」な精神構造

技術者に多いのだが、物事を簡単に説明できる人が少ない。なぜだろうか?

たとえばインターネットでプログラミング技術に関しての情報掲示板などを見ていると、技術や情報は人に教えてもらうのではなく、自分で調べて学ぶものだと考えている人が非常に多いことに気がつく。
「初心者お断り」とか「そんなの人に聞かないで自分で調べろ」とか「過去スレくらい検索してから質問しろ」とかいう発言、書き込みをいたるところで目にする。

技術者って、すげぇ、怖い・・・。

とボクなんて思ってしまうのだが、なぜこんなに技術者は初心者に厳しいのだろうか。ひとつには自分が苦労して身に着けた技術なり知識なりを簡単に他人に無償で提供することに対する「ケチ」な考えがあるのではないだろうか?
確かに、自分が何年もかけて習得した技術ノウハウを無料で提供するなんて本当にもったいないことだ。また技術者である以上、自分が持っている技術優位性において、職を得て、対価を得ているというわけだから、わざわざ他人に親切に技術を教えて、ライバルを作ることはできないはずだ。
しかしながらもっと広い視野で見たときには、その考えが本当に技術者にとって良いことかというとそうとは言えないのではないかと思うが、その話はまた今度。

で、そんな「ケチ」な精神構造は、実は日常生活でも遺憾なく発揮されてしまう。そのため技術者の話はまったくわからないとなってしまうのだ。なぜなら、「私の話がわからないのは相手のスキルが足りない」と考えてしまうからだ。まったくもって相手の力量に合わせた話ができないのだ。相手が技術のわからない営業職の人間でも取引先の重役でも、まるで技術チームの製品レビューのような口調で話をしてしまう。これでは当然、相手には何も伝わらない。

場を想定すること

ではどうすればいいのか?お互いが同じ辞書をもって話をすることだ。

簡単な話、日本語のわからないイギリス人に日本語で話をしてもまったく話は通じない。お互いが頭の中に共通にもっている辞書に出てくる言葉を使って話をしなければ話は通じないのだ。たとえ同じ日本語の辞書であっても、相手が小学生用の辞書しか持っていないのであれば、こちらも小学生用の辞書を使って文章を組み立てて説明をしなければならないのだ。でもいったいどうやってお互いの辞書をすり合わせすればいいのだろうか?

ここで重要なのが、「場」を想定するということだ。プレゼンテーションの場がどういった場なのか?開催場所は、人数は、相手の役職は、相手の目的は、などその「場」を想定して、どういった辞書を使えば、その「場」にふさわしいかを事前にシュミレーションしておくと良い。

たとえば自社の先端技術について、株主であるステークホルダーに対して説明をするという場があるとする。株主はさまざまなキャリアのひとであるはずだ。そして株主であるからには、自社の情報をある程度持っている。そしてその技術がどういった技術要素でできているのかという話よりも、どんな先進性をもちどんな優位点があるのか、そしてどんな点で収益に結びつくのかという点を聞きたいはずだ。であれば技術要素に関しての辞書はなるべく簡単にわかりやすいものを使って、まずはどんな技術なのかを理解していただくという点に力をいれようとなるはずだ。そしていくつかの用語についての詳しい解説を資料として配布すればよい。

何でもかんでも話そうとして、何でもかんでも資料を用意しようとする人がいるが、話すとはそういうことで、資料とはそういうものなのだと理解して欲しい。

プレゼンテーションの「場」を意識しよう

プレゼンテーションの「場」は技術をひけらかして自尊心を満足させることが目的ではなく、相手に何をしてほしいのかを伝え、実際にその行為に導くための「場」であるということをしっかりと意識するべきだろう。それができれば自然とケチな考えをすて、本来の目的のために相手に通じる言葉で話をすることができるだろう。